ならまちは、先日も書いたとおり、元々、元興寺の境内だった場所に職人さんとかの家が建ってできたまちです。岐阜市の川原町と同じように、そういう地名があるわけではなくて、「みなさんがそう呼んでいる」という場所。
特徴は、何と言ってもこれ。



わかりますかね?
え? わかんない、って? ――じゃ、拡大。





ご商売している家にも普通のお宅にもつり下げられている身代わり申です。
ならまちには庚申さん(庚申堂)というところがありまして、庚申信仰が盛んなまちなんですよ。
こちらが庚申堂。

屋根にも猿がいますし、提灯の後ろに、たくさんの身代わり申が吊されています。




気をつけて見てみると、庚申堂や身代わり申というのは、他の土地でも見かけるんですが、私の場合は学生時代にこのならまちで見たのが初めてでした。友達が奈良女子大学に通っていたので、彼女に案内してもらって見たのが初めて。
身代わり申というのは、簡単に言ってしまうとお守りみたいなモノで、災難を代わりに受けてくれるんだそうです。それで、ならまちの方々は、家の災難を代わりに受けてくれる身代わり申を軒下に吊すようです。
今では見慣れましたが、初めて見たときには、さるぼぼの手足を縛っているような形状に見えましてね、「身代わり申」という名前と相まって、「さるを縛って(逃げられないように手足を縛って)吊して、自分の災難を負わせるなんて…(怖)」と思ってしまったので、しばらくは「庚申信仰って、怖い宗教だ…」と思っていたのは内緒です^^;。
庚申堂のお隣のお宅の他、近くにある奈良町資料館(昨日書いた、元興寺の礎石があるところ)で、身代わり申のお守りを分けていただくことができます。
左の写真が庚申堂のお隣のお宅、真ん中と右が資料館(正面と出口の様子)。



分けていただける身代わり申の基本形は、こちら。

10円玉くらいの大きさで1,000円。自分用にはこれをいただきましたが、母にはこれが9つ連なったお守り(苦(9)をさる)を分けていただきました。
さるぼぼを見慣れた身からすると「うっ、ちと高いなぁ」と思うのですが、単なるマスコットじゃなくて、「お守りですから」「奈良庚申講本部がお分けするものですから」ということでこういうお値段のようです。
ちなみに、特許庁登録されているそうで、母へのお土産にした9連のおさるの方には「複製品を作って売ることを禁じます」というようなことが書かれた紙が入っていました。
……気持ちはわかるんだけど、庚申さんの御利益をあてにして買った(わけていただいた)側からすると、そういう現実感は見ていて気持ちのいいものじゃないなぁ、と思いましたことよ。
余談ながら、元興寺(極楽坊)に行ったときにも、この“商売気”みたいなものが気になりました。
拝観料にJAFの割引があったり(そりゃ、ありがたいけど)、永代供養はまあいいとして、地蔵会もかなりショーアップされてるみたいだし、先日も書いたイマドキショップ風の「GANGOJI」「がんごうじ」の看板とか。
興福寺のミュージアムショップ(?)もなかなかに商売気がありましたし、「ああ、そういえば奈良県というのは、工業生産額よりも商業生産額の方が多い土地柄だったんだわ」ということを改めて思い出しましたのよ。
まぁ、いいんですけど。実を言えば、大阪の四天王寺を初めて見たときの方が衝撃でしたし。
というところで、話を元に戻しまして、まぁ、そういうわけで、ならまちのあちこちで、身代わり申を見ることができます。
古い街並みもさることながら、ならまちの魅力はこの身代わり申にもあるんですよねぇ。

ちなみに、昔、初めてならまちに連れてきてもらったときと比べると、ならまちはかなり明るい印象のまちになりました。
高山の古い街並みも、美濃市のうだつの上がる街並みも、多治見市のオリベストリートも、岐阜市の川原町も、それから伊勢神宮前のおはらい町だってそうなんですけど、昔ながらの古い建物を単に保存するだけじゃなくて、一旦現代風の建物が建ってしまったところや空き家になっているところは“お化粧”したり、道路も街並み整備されたりして、キレイにしてるんですよ。





特に、新しいお店(特に飲食店)が随分とたくさんできているというのが、昔と比べると一番の変化だと思います。古い建物を利用した、主に観光客向けのおしゃれなお店だったり高級感あるお店です(基本的に観光客向けなので、安さよりも高級感やおしゃれさをウリにしてる)。
もちろん、昔からあるお店もありますが、昔は住家だった場所がそういうおしゃれな飲食店になったために、そのお店を目当てに来る人もあり、相乗効果でならまちを訪ねる人が増えているようです。
私も前回は、そういうちょっとお高いお店で食事しました。そのお店は、元々違う場所で営業していたのだけれど、この物件が出たので移転したということでした。どうやら、ならまちは営業するのに“いい場所”らしく、出る物件はすぐに埋まってしまうのだと言っていました。
今回は、あまり人通りの多くないところも歩いたせいか、こういう物件も目にしました。


ちょっと見にくいけど、左の写真がレンタルスペースとして貸し出されている建物で、右の写真がテナント募集中の店舗(どうやら昔はたばこ屋さんだった建物の外観を身ぎれいにしたような感じ)。
ま、元々このまちに住んでいる人が商売をやりたいとは限りませんからね。そういう人に有効に使っていただいて、街並みを維持していくためにも、こうした物件の流動性を高めるということが大切なのかもしれません。……などと、ここでも商店街活性化みたいなことを思った私なのでした。
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